「賛成多数=大阪市廃止」を説明したか?


 この住民投票では、賛成票が反対票より1票でも多ければ、120年以上の歴史を持つ大阪市は廃止されることになっていました。「賛成多数=大阪市廃止」は、大阪市民にとって知らされなければならないある意味最も重要な事実でしたが、このことを説明したのでしょうか?

 

1.特別区設置協定書

2.特別区設置協定書について(説明パンフレット)

3.住民説明会(事務局による説明)

4.住民説明会(市長による説明)

5.住民説明会(質疑応答)

6.投票用紙

7.大阪維新の会

8.経済人・大阪維新の会


1.特別区設置協定書 → 説明なし

 協定書には、「大阪市を廃止して・・・」というような表現は1回も出てきません。ただ、特別区の設置は、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づいており、この法律は「道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続並びに特別区と道府県の事務の分担並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置について定めることにより、地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けること」を目的としています。つまり、「関係市町村の廃止」が前提で、協定書はこの法律の第五条(特別区設置協定書の作成)に対応して書かれているため、「大阪市を廃止して・・・」というような表現を入れにくかったのかもしれません。この辺りは、管理人にはよくわかりません。

 

2.特別区設置協定書について(説明パンフレット) → 1ヶ所小さい字で説明あり

 下の図のとおり、説明パンフレットには2ヶ所「賛成多数=大阪市廃止」に関係しているところがあります。

(A) p.4で、「現在」の図には大阪市があるのに、「特別区設置後」の図に大阪市がない。

 これは、知っている人が見れば分かりますが、大阪市がなくなるとは思っていない人は、大阪市があるのは当たり前でわざわざ書かれていない、そしてその大阪市の中に5つの特別区ができると思ってしまう可能性があります。


(B) p.6の説明文中に、「賛成の票数が有効投票の半数を超える場合は大阪市は廃止され」と書いてある。

 確かに書いてあります。しかし、ページの一番下の「今後のスケジュール」の中の段落に紛れていて、ここまで細かく読まない人が多いのではないでしょうか。大阪市民に「賛成多数=大阪市廃止」を是非とも伝えたいという気持ちは全く感じられません。

3.住民説明会(事務局による説明) → 説明なし

 事務局の方は、特別区設置協定書について(説明パンフレット)を用いて説明しましたが、その6ページ(すぐ上の図を参照のこと)の「今後のスケジュール」では、次のような説明をしました。39回ともほぼ同じ内容で、例えば第1回説明会での田中大阪府市大都市局制度企画担当部長の説明は次のとおりです。

 

「今後のスケジュール」についてご説明申し上げます。特別区の賛否を問う住民投票については5月17日日曜日に大阪市民の方を対象に実施されます。この住民投票で特別区設置についての賛成の票数が有効投票の半数を超える場合は平成29年4月に特別区が設置されることになります。また、反対の票数が有効投票の半数以上の場合は特別区は設置されません

 

 このように、「大阪市が廃止され」の部分は説明ではスルーされています。

 

4.住民説明会(市長による説明) → 説明なし

 「賛成多数=大阪市廃止」の説明は全くありません。

 

5.住民説明会(質疑応答) → 1回だけあることはある

 第12回説明会で、市民からの質問があり、それに答える形で1回だけ「大阪市はなくなる」と言っています。この際のやり取りを以下に示します。

 

質問者:特別区設置協定書について、住民投票が行われると書いてあります。なぜ、ここに「大阪市は廃止される」と書いてないんですか。その説明足りない。1カ所だけ、「住民投票の結果、廃止されます」と書いて、ちっちゃくあるんです。しかし、大都市局長からの説明には、それは抜けてます。なぜ、「大阪市廃止」という文言を、私は、避けてるように思うんですけど。

市長いや、避けてません。結果はそうなりますけども。・・・。「大阪市廃止」という文言は敢えて入れていませんけども、大阪市は確かになくなります。ただ、それをどうとらえるかということです。新しく名前が変われば大阪都になる。そして、特別区になりますので、東京と同じようなスタイルになるわけです。東京都渋谷区、東京都新宿区。これで別に新宿の皆さん、東京の皆さんは、東京も72年前、東京市・東京市役所がなくなりましたけども、72年たった今、東京都民の中で、「東京市がなくなって問題だ、問題だ」と言ってる人は、僕は聞いたことありません。

 

6.投票用紙 → 説明なし

 投票用紙のタイトルは「大阪市における特別区の設置についての投票」で、大阪市に特別区を設置するような表現になっています。

 

7.大阪維新の会 → 説明なし(「大阪市は潰しません」「街はなくならない」「大阪市は廃止・解体されない」とのことです)

 2011年の大阪市長選挙時に大阪維新の会が配ったチラシには「だまされないで下さい!!大阪維新の会は、大阪市をバラバラにしません、大阪市は潰しません」と書かれていました。

 また、大阪維新の会の「大阪都構想特設サイト」の「都構想Q&A」には、次のように「街はなくならない」と書かれていました。

 さらに、大阪維新の会の「大阪都構想特設サイト」にある「橋下徹が解説する 教えて!大阪都構想 大阪市は廃止・解体されるの?」というタイトルの映像では、橋下氏は次のように言っていました。

 

これはね、大阪都構想は、大阪市役所と大阪府庁という役所のしくみを変えるだけですから、地域のコミュニティがなくなるとか解体されるとかはありません。大阪府庁と大阪市役所を一から作り直すという、ま、役所組織を変えるということです。ですから地名もそのまま残ります。地域コミュニティもそのまま残ります。まぁ、よくあのぉ市町村合併とか、あー、よく聞い、聞かれることあると思いますが、合併をしたとしても、役所の姿は変わりますが、地域のコミュニティは全くそのまま、あー変わりません。ですから地域行事も、ま盆踊りも、何もかも、そのまま残るわけですから、大阪市が廃止とか解体ではなくて、大阪市役所、大阪府庁という役所組織を一から作り直すということです。

8.経済人・大阪維新の会 → 説明なし(「大阪は栄える」とのことです)

  経済人・大阪維新の会のHPには、次のように「大阪は栄える」と書かれていました。


(最終更新:2016年1月17日)